かわりばえのする私 vol.22
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最近は減った気がするけど、昭和や平成の時代って「サングラス芸能人」がたくさんいました。
「サングラス芸能人」というのは──私が勝手に決めた定義ですが、素顔を誰も知らないくらい常にサングラスをしている芸能人(有名人)のことです。
代表を挙げればまずタモリさん。ほかにも(以下敬称略)、井上陽水、浜田省吾、鈴木雅之、サンプラザ中野、アルフィーの桜井賢、みうらじゅん、ライムスター宇多丸、DJ KOO、コブクロ黒田俊介、ゴスペラーズ村上てつや等々……。ミュージシャンが多いですね。EXILEのATSUSHIを入れてもいいけど、彼は素顔もよく知られているからなあ。こう見ると、若い人と女性はほぼいない。
彼らは、なんでサングラスをしてるんだと思いますか?「おしゃれ」「カッコいいから」ですかね?
タモリさんはデビュー頃にはアイパッチ姿で、その後ある人にアドバイスされてサングラスをかけるようになった、という経緯を聞いたことがあります。このように、それぞれにそれぞれの理由があるだろうことは分かってます。でも、勝手になんとなく推測している、彼ら全体に共通しそうな理由が一つあるんですよ。
彼らはおおむね、「照れ隠し」でサングラスをかけているんじゃないか、と!
人前に立つ仕事はしたいけれど、自分の素顔を見せるのはどうも恥ずかしい。大勢に見られていると思うと、素顔を丸出しにするのは照れくさい(バレたくない、も含む)。あるいは、容貌をどうのこうの言われたくない。そんな気持ちがどこかにあるんじゃないか、と思っちゃうのです。
私自身も、そもそも自分の顔を世間にさらしたくなかったわけですが、イラストの自画像すら、最初に「メガネをかけて、目を描かない」というふうに設定してしまいました。イラストだからどうでもいいはずなのに、これも同じような理由です。
私、ふだんはメガネかけてないんですよ。目は悪いけど度が強すぎるからコンタクトレンズを常用していて、メガネはむしろ避けているほうなんです。でもね、自画像に目を入れると、変にかわいくなっちゃったりするわけ。目って、どう描いたら「ちょうどよくかわいくなく」できるのか、とても難しい。目で表情をつけようとすると、「なに自分で自分をかわいく描いてんだよ」っていう自分からのツッコミが入っちゃう。だから、かけてもいないメガネをかけさせて目を描かない、という方向でやっていこうって決めたんです。
漫画家の自画像って、自分をどう描くかに迷った末、こういうふうに実物と離れていく例が多い。サングラスをかけていたりとか、そもそも人間じゃなかったり(動物・ロボット等)とか。それはほとんど照れとか自意識の問題だと思う。
サングラス芸能人で特異なのは、所ジョージさんだと思っています。いまの所さんしか知らない方は、若い頃の所さんの写真を検索してみてください。完全なるサングラスキャラです。自画像のイラストもサングラス姿でした。それがだんだんサングラスの色が薄くなって目がこちらから見えるようになり、だんだんただのメガネになり、今ではもうメガネをおでこにかけていたり、メガネをかけていなかったりします。サングラス芸能人だった人が、いきなりそれを外すわけではなく少しずつ裸眼芸能人(コンタクトかも)に移行したという、稀有な例だと思います。
もちろんファッションにも精通した人だから、トータル的な見た目としてサングラスを選択したという一面もあるでしょうが、所さんはもともと歌手としてデビューした人だし、若い頃はきっと、自分で作った歌を人前で歌うということに照れがあったんじゃないかと私は勝手に推測しています。歌手という仕事よりもだんだんバラエティタレントとしての仕事のほうが多くなっていって、見られることに対する自意識が変化し、サングラスをやめる方向になっていったんじゃないでしょうか。
ともあれ、私みたいに、顔出しはあんまりしたくない、でも人気商売みたいなことには多少たずさわりたい……そういうわがままな人間に、サングラスはぴったりじゃないか。前例がたくさんあるじゃないか。ざっくり言えば、私はタモリさんを見習えばいいんじゃないか!?
ということで、私はラジオ番組が始まるにあたって会見をしなきゃいけなくなったとき、思い切って「サングラスをかけている人」になることにしました。
女性芸能人・有名人で常時サングラスという人はほとんどいません。男性と違って、お化粧でけっこう変わることができるからかもしれない。あるいは、男性以上に容貌で評価されやすいから隠すわけにはいかない、という世間の無言の圧力があるのかもしれない。でも、そのぶん、女でサングラスキャラというのは世間に刃向かってる感じもあるし、唯一無二でいい……はず。
この件、つづく。
Illustrator/Takayuki kudo
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