【フェムテック】PMS(月経前症候群)との付き合い方を知ろう! -後編-

前編では、PMS(月経前症候群 読み:げっけいぜんしょうこうぐん)の症状を改善する成分や女性ホルモンの仕組みに関して伺ってきました。後編では食事以外の症状緩和に関して深堀りします。
\今回お話を伺ったのはこの方/
大塚製薬 女性の健康推進プロジェクト
小野田敦子さん

大塚製薬株式会社ニュートラシューティカルズ事業部「女性の健康推進プロジェクト」所属。製品を担当する部署にて、女性の健康推進・活躍に関する啓発活動に従事している。
資格:薬剤師、スポーツファーマシスト

日常生活の見直しがPMS緩和につながっていく
:これまでのインタビューで、食事面だけでもかなり症状の改善につながることが分かりました。それ以外だといかがでしょうか?

:PMSに限らないのですが「適度な運動(軽く汗をかく程度の有酸素運動)」「禁煙」「しっかり休息をとる」などは本当に大事ですね。普段の行動を見直すことがPMS症状やちょっとした不調の改善につながっていくと考えられます。自分の健康状態のベースを底上げするというのが大切です。

:私にも刺さる部分が……(泣)。自分の生活をしっかり見直したいと思います……(汗)。リラックスできる香りもいいですよね。

:香りといえば、ゆずやラベンダーなど自分の好きな香りを嗅ぐことで落ち着いたり、リラックスできたり、精神的な症状がちょっとよくなったというお話もありますね。個人差はあるとは思うんですけれども。

漢方やサプリメントは長期間の服用がカギ
:気持ちがリラックスすることが重要なんですね! ここまで伺った日常生活の改善もかなり大切だなと感じました。ただ、それでもちょっとまだつらいかも……という時がある方もいらっしゃるかと思うんですが、そんな時に症状をより和らげてくれる薬などはありますか?

:日本では、対処的に鎮痛剤を使う方もいらっしゃいますが、漢方薬を使用される方もいらっしゃいますね。水を溜め込みやすいのか、血の巡りが悪いのか、乾燥気味なのか、などそれぞれのタイプ(証)によって合う合わないがあるので、漢方にお詳しい病院・診療所・薬局などで相談するのがいいと思います。漢方やサプリメントは、3ヵ月から半年くらい続けていただいて "自分の体質から変わってくるのか" みたいなかたちで長い目で見ていただいたほうがいいかなと思います。1ヵ月とかだとまだ変わっていない段階なのに、それであきらめちゃうみたいなのはちょっともったいないかなと。

:確かに漢方薬とか、サプリメントとか、短期間で効果が出ないなと思うとすぐやめちゃいます……。続けることが大切なんですね。

:啓発活動でお客様と接することがあるのですが、「飲んでいるときは改善の自覚がなかったけど、やめた時に、この症状戻ってきたな、実は飲んでいた時はよくなっていたんだと気付けた」というお声はよく聞きますね。あるいは、例えば、朝が弱いタイプだと思っていたら、サプリメントを飲んだらすっきり起きれて体が軽いと実感して、「今まで朝は寝ていたいと思うのが普通だと思っていたけど、実はずっとちょっと不調だったんだと気付けた」というお声も聞きます。なので、身体によいと言われているものは、まずは試してみるといいかなと思います。


オンライン診療も増加! 婦人科へはまずカウンセリングから
:読者の中にはPMSや月経に関することだとなかなか病院に行きづらいというお声もありました。

:妊娠・出産でなくても気軽に婦人科には行っていただきたいですね。PMSに限らず別の病気が隠れている可能性もありますし。今の自分の状態を知っておいてもらうことも大事ですので「パートナー」として、かかりつけの婦人科医を見つけられるとベストだなと思います。そもそも、女性の一生における身体の変化は、女性ホルモンの影響をものすごく受けるので、月経のある時期だけでなく、今後の更年期やそれ以降も診ていただけると安心ですよね。自分の状態を分かってくれる専門家がいるというのはすごく頼りになると思うので、かかりつけの婦人科は早めに見つけておくのがオススメです。

:今はオンライン診療も増えていたりしますよね。

そうですね、私自身まだ経験したことはないんですが、カウンセリング兼オンライン診療みたいなものがどんどん今後可能になっていくのであれば、これまでなかなか気持ち的に婦人科に行くのが難しかったけれど、オンラインであればという方は増えていきそうですよね。診断や処方に関わる場合はリアルで受診をされた方がいいと思うのですが、カウンセリングならオンラインで手軽に、と選択肢も増えますもんね。アクセスしやすい環境、というのはとても大事だと思います。
寝る時にも重要なポイントは隠されている!?
:ちなみに……PMSの時の1日のスケジュールを知りたいという質問があったのですが、これは先ほどもおっしゃっていたようによく食べて、よく動いて、よく寝てという生活が理想ということですよね?

:そうですね。しっかりと睡眠をとるためには程よく運動したりとか、ちゃんと入浴をするとか少し身体が疲れさせた方がいいと思うんですよね。


:運動に関しては、PMS中は何もやる気がなくなってしまうので運動もやめてしまうという意見がありました。この場合、気持ちに従って何もしない方がいいのか続けた方がいいのか、どちらが適切なのでしょうか?

:例えば運動の強度を下げて "ながら運動" みたいなのはいかがでしょう。歯を磨いている時にちょっとつま先立ちをしてみるとか、テレビを見ながら足上げ運動をしてみるとか。気持ちがのらない時に、どこかに行って着替えて運動するというのはすごく大変だと思うんですね。注意散漫だと怪我をするかもしれませんし。でも、全くやらないと自己嫌悪になって、それはそれで悪循環になってしまう。だから楽に達成できる動きを取り入れ、「今はこういう時期だから、この程度動けていればOK」と、負荷の高い運動ができなくても自分を許してあげたり、でもこの程度なら出来た!と自分を褒めて認めてあげたりするのがいいと思います。あとはきちんと湯船につかるのも大事です。シャワーで済まさずにきちんと湯舟につかることで、ぐっすり眠れてまた次の日の良い循環を生むんじゃないかなと思います。


:以前テレビで見掛けたんですが、パジャマだとしっかり疲れがとれると。

パジャマを着るって大事らしいですよね。 "解放されている" 要素が大切だったりするみたいです。長袖の長ズボンパジャマは全然いいんですが、手首や足首がすぼまっていないとか、手のひら、足の裏を解放していただくといいかなと思います。「冷えちゃって眠れない」という方は布団の中を温めておくと◎ 冷えないように寝る前まで靴下をはいていただくのはいいのすが、寝る時は脱いた方がいいと聞きます。
PMSとうまく付き合っていくために
:ピルに関しての意見もありました。「どういうものか分からなくて使うのが怖い」「ピルは副作用が怖いので市販薬で和らげたい」とか。

まず、月経にまつわる諸症状の緩和に低用量ピルが使われるのは確かですが、現在日本では、医師が「月経困難症・子宮内膜症の治療を目的としてピル服用の必要がある」と判断した場合に保険が適用される、ということを知っておいていただければと思います。実際に、日本は海外に比べてホルモン剤への抵抗感が強い印象があります。更年期障害の治療としてのHRT(ホルモン補充療法)の使用率もすごく低いんですよ。「どういうものか分からない。怖い」ということもあると思うのですが、知ること自体をやめてしまうのはちょっともったいないと思いますので、専門家から正しい知識・情報を入れ、日々の体調に関する記録や婦人科受診を通じて自分の状態を知って、そのうえでどう判断するか自分で決めていくことができたらいいなと思いますね。

:あまり知識がない状態でだとよくないですよね。素朴な疑問なんですが、ピルって最大どのくらいの期間使用可能なんでしょうか?

:現在は、最長120日間連続で飲むことが可能な種類もありますが、医療機関で指示された服用方法に従って服用してください。女性ホルモンを外から補うことで子宮の内膜の厚さを厚くし過ぎないことができるので、出血の辛さが軽減できることもあります。毎月月経が仕事や私生活に影響するぐらいお腹が痛くなったり寝たきりになってしまったりする重めな方は「月経困難症」かと思いますので、まずは受診をオススメします。現時点での出産の希望がなければ、そのままにするのではなく低用量ピルを飲んでコントロールするという選択肢もありますし、コントロールすることは体にとっても悪いことではないんです。むしろ子宮内膜症や子宮筋腫などの病気にもなりにくくしてくれます。そうやって自分の身体とうまく向き合っていけたらいいですよね。

:確かに、自分の身体をうまくコントロールしていくことが重要ですね! では最後に、改めてになりますが今後女性ホルモンとうまく付き合っていくために大切なことはなんでしょうか。

まずは「知る」ことが大切ではないでしょうか。我々の企業で作っているサイトもあるのですが、ネットの情報はいいのもあれば悪いのもあるので変におどらされないようにしてほしいです。学会とか、婦人科医など専門家が発信しているものを見たり聞たりするのもいいと思います。そういった情報を知ったうえで、じゃあ自分の身体の状態はどうなのか、記録をしたり、検査・健診(検診)をして自分の今の状態に「気づいて」いただければと思います。その次に「相談」ですね。婦人科医や薬剤師など、自分の今の身体の状態にはどうしたらよいのか、将来に向けてどう取り組んでいったらいいのか等、専門家に相談できるといいですよね。そうやって自分の身体にとって必要な情報を得られたら、最後は「対処(行動)」してみる。認知行動療法をやってみるのか、生活習慣の何かを変えてみるのか、婦人科で処方された薬を飲むのか、最終的には自分でどうするか選択し、実施していく。試してみて、より健康になれそうかどうか自分の心身の声に耳を澄ませてみる。また新たな情報を得たり、定期的に婦人受診したり、専門家に相談たりして、次の対処(行動)に活かしてみる…そうしていくことで、その後もいいサイクルができるようになると思います。この一連の流れはPMSに限らず、それ以外のことにも応用できると思います。まずはこのサイクルを皆さんに始めてみてほしいですね。

ここまでいろいろなお話を伺ってきましたが、正直編集部も知らないことが多かったです。それぞれが自分の身体に合わせて上手な付き合い方をしていけたらいいですよね♪

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