買わりばえのしない私 vol.13
能町さんはあれこれといろんなものを買ってるのに、この連載を書く頃になると「私何か買ったっけ……」と言い出します。今回もこんな大物買い&お誕生日だったのに!
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2024年03月6日
キャットタワーを買った
我が家は猫のためにリフォームしたので、天井近くに部屋を一周するような高架の高速道路(キャットウォーク)がある。しかしこの高速に乗るためのインターチェンジ(上下を移動するルート)が玄関前とテレビ横の2か所しかないため、交通の利便性を考え、もう一つインターチェンジが欲しいと住民(猫)から熱望されていた。少なくとも飼い主(私)はそう思いこんでいた。そのためにはキッチン近くにキャットタワーを設置すればいい、と前から考えてはいた。
でも、猫グッズって、基本的に非オシャレ。猫自体がオシャレを超越した衝撃的なかわいさを持っているので、猫グッズメーカーも本体のかわいさに甘えているのか、すごい中途半端なかわいさのものをプレゼンしてくる。言葉を選ばずに言うと平気でめっちゃダサいものが売られている。これが猫飼いの悩みです。
キャットタワーですらそういうところがある。変に中途半端な、微妙な商品が多いんです。お部屋に常にあるものですから、多少はファッショナブルなものにしたい。そんなものをネット上で探し当てるのは面倒くさい。じゃあ、買わない。
という状態で時は流れていたのだが、同居人がネットで探しあてた。床から天井までの太い柱にたくさんスリットが開いてて、そこに踏み台とかカゴとか爪とぎとかを差し込み、好きなデザインにできるという使いやすそうなもの、かつ、余計なかわいさをそぎ落としたシンプルなもの。
自分で選ぶと、これかな、いややっぱりこっちのほうが、いや同居人が気に入るかどうか、などと迷いに迷って面倒になって「もういい!」と一人逆ギレしてあきらめがちだけど、他人が決めたものなら即断で買ってしまう。優柔不断人間が人と暮らすことの機微がそこにある。
で、届いて組み立てて、オシャレ度的には本当に満足なんですけど、ウチの小町は使ってくれません。なんてベタな猫あるあるなんだ。小町を抱きかかえて強制的に乗っけてみても、小町は上るルートと下りるルートを必死で探してタワーからの脱出ゲームばかり考えている。一か月ぐらい経ったら慣れるかと思っているうちに、変わらず一か月が経った。以上。
2024年03月17日
口紅を買った
こんなことファッション誌で言っちゃダメだけどお化粧めんどくさいんですよね。そもそも好きでもない。
フリーランスである私はいつからか、いかに日々の化粧を略して強行突破できるか試しつづけてきた。仕事の用がない日は(いや、時にはある日でも)、ファンデーションを塗らず、眉毛とチークとアイシャドウだけちょっと載せ、それでどうにか顔が成立していると決めつけてここ15年くらい突き進んできた。でも、まあ、認めたくないけど、何でしょうね、結局加齢のせいですかね、肌もくすんだのかな、上記のアイテムのほかに口紅はしておかないと如実に化粧してない顔に見えてしまう40半ばになったんだ。
実は口紅というものが化粧品の中でも特に苦手。飲みものを飲むたびに容器などに跡がついたりするのも妙に汚い気がしたり、目立つのをつけて「お化粧してます感」が鮮烈になるのもいやだし、なんなら「くちべに」と発音する時のベッタリした音の感じすら苦手で(曖昧に全部「リップ」って言っちゃえばいいのかな?)、この感覚って10代前半くらいから持ってるんだけど、40代になってもまだキープしてるんだから我ながら大したもんだと思う。少々病的なこだわりに分類される気もする。
そんな話をしていたら、友人兼担当編集の西村が、誕生日記念にちゃんと気に入るのを買いに行こうよと言い出した。
私の誕生日は3月17日。春めいてくるいい頃で、全部奇数で3も1も7もわりとイメージのいい数字で、気に入ってんの。覚えてね。
誕生日当日、せっかくだから伊勢丹でしょ、となる。伊勢丹はいいものを買うときの大人のたしなみ。化粧品売り場って一階にあるもんだと思っていたら、地下二階にもナチュラル志向(?)みたいな化粧品売り場があることを西村に教えてもらった。私みたいなもののためにあまりギラギラしてない売り場が離れて用意されてること、さすが伊勢丹だな。
いろいろ試した結果、やはり冒険するようなものは買わず、かなりナチュラルな色のものを一本買ったので、ちょくちょくつけるようになった。不思議なもんで、こんなにナチュラルな色でも、つけてないのとつけてるのでは全然違うもんですね。地の唇の色とそんなに変わらない気がするけど、塗っておくだけで顔がちゃんとできあがった感じになるね。こんなの10代で気づくことだと思うけど、私は45歳になった日に気づいたよ。気づきに遅いも早いもないよ、これでいいよ。
ついでに、頭をマッサージするウカのケンザンというものも買いまして、これらが私の自分用誕生日プレゼント。今後私は誕生日に美容関係のものを買う人になっていく気がする。そういう加齢の変化は嫌いじゃない。
Illustrator/Takayuki Kudo