かわりばえのする私 vol.25
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本当に申し訳ないけど、これは偏見でしかないんだけど、初めて会った人がパステルカラーを基調とした服装だと、私は一歩引いてしまうのだ。私と話合わないんじゃないかなあと、最初の壁がちょっと厚めになっちゃう。
服を地味めにまとめた人にも何系統かある。パステルカラー基調でまとめた人、モノトーン基調の人、アースカラー基調の人。この三系統は、色合いというよりも、立ち位置が似ている。パステルカラーもモノトーンもアースカラーも、めったに嫌われることがない。どんな人も、パステルカラー・モノトーン・アースカラーの服は何かしら持っている。もしこの三系統を全部拒否するという人がいたら、その人の服は上から下まで原色になってしまい、頭から足まで主張しすぎる超ファンキーな人になってしまう(いや、別にそれはそれでいいんだけど)。
で、この三系統、地味めで無難という意味ではそんなに変わらないじゃないかと思われそうですが、私は断然パステルカラーにだけ警戒してしまう。私もモノトーン・アースカラーは別に嫌いじゃない。けっこう持っている。ただ、パステルカラーだけは……それだけは、長いこと嫌いつづけてきたのだ。パステルカラーのものだけは極力着るまいと思ってきた。
モノトーンやアースカラーみたいに「この地味めな色でシックに行くぜ」という決意を持っての選択ではなく、「カラフルなものはまといたい、でも主張して嫌われたくない」と、無難の後ろに弱腰が見える、それがパステルカラー。その妥協ぶりが私は苦手なんだ。
私の目には、日本はパステルカラーまみれに見えます。服はもちろん、付箋やノートなどの文房具、カーテンなどにもふわっとした桃色・黄色・水色が多い。こういう商品はまさに「カラフルにはしたいが、売りたいので、嫌われないよう地味にしておく」というもの。実に弱腰!
無難にパステルカラーでまとめている人にお目にかかると、まず「この人はファッションというものの捉え方が私と全く違いそうだ」「すなわち、いろんな考え方のベースとしているものが違いそうだ」と構えて、少し緊張してしまうのである。もちろん、話してみたら意外とそれ以外の部分では話が合う、ということもありますので、あくまでも第一印象だけの話なんですが(余談だけど、全身パステルピンクでまとめたロリータファッションのように、パステルカラーでも強烈に主張してくれれば話は別である。そこまで行ってくれればむしろ尊敬する)。
ともあれ、このようにパステルカラーを嫌って20年あまり、パステルカラーのあふれる日本で私はどうにか無事に生きぬいてきました。しかし、どんなファッション誌にも、パステルカラーの服が載っていないということはまずありません。この誌面にもたくさんパステルカラーの服があるでしょうから、いろんな人を無駄に敵に回しているような気もします。申し訳ありません。
それでも私は、できるだけ「パステルカラーで無難にまとめる」「パステルカラーならまず問題なし」のラインからはみ出す人が増えてほしいなと願うのです。だってそのほうが断然自分のまとう物に対して意識的になれるし、何より、楽しいから。
参考になるのは、唐突ですが、アフリカです。
「アフリカ 布地」で画像検索してみてください。
アフリカの布地、派手だし柄も謎に躍動的だし、パステルカラーがほとんどなくないですか? とにかくエネルギーがみなぎってませんか? 柄を見てるだけで元気になれませんか。
そしたら次に「サプール」で画像検索してください。
世界最貧国とも言われるアフリカ・コンゴ共和国で、貧しい暮らしの中でもド派手な高級ブランドのハイファッションを楽しむ人たち(あるいはその風習)です。詳しい説明は省きますが、興味がある人はちょっと調べてみてください。ド派手で、しかも、めちゃくちゃかっこよくないですか。
私はたくさんの人がこのくらいのおしゃれを楽しめる世の中であってほしい。本気で。
とはいえ、いきなり全部この調子にはいかないのも分かります。急にこんなことしようとしても恥ずかしいし、バランスは取れない。私だってここまではできない。だから、おおむねモノトーンでまとめつつもどこか1か所以上、差し色のようにこういうパキッと輝いた原色を入れる、それだけでもいい。アクセサリーとか、爪とか。それだけで生命力が生まれるの、日常に。
ちなみに私はいま髪のインナーカラーに蛍光グリーンを入れてしまいまして、どんだけ地味に装ったって頭がイカれた光り方をしているので、もう大丈夫です(何が?)。
Illustrator/Takayuki Kudo