かわりばえのする私 vol.29
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女性誌のコラムどうですか、好きですか。ここを読んでるってことは、あなたは好きなんでしょうか。
女性誌のコラムを読むと、だいたい、読者層より少し年上でちょっとカリスマ的な魅力を持つステキな女性が、えらそうに、読者にアドバイスをしている。
えらそうに、だってさ。書いちゃったよ。えらそうにアドバイスをしている、なんてのは私の偏見。偏見にも程がある偏見。カリスマのみなさんの文章は、全然えらそうじゃない。ちゃんと気をつかって書かれていて、湿度のある文体で、優しい。だけど、優しすぎてさ、悟りすぎてるように見えて、私には時に偉そうに見えてしまうことがある。
アドバイスというのは、別に直接的なものばかりではない。直接的なものはむしろ少ないかもしれない。「あなたたちはこうしなさいね」「こうするといいわよ(なんか妙に女言葉で)」みたいな口調じゃなかったとしても、――私の友達(これがまた、だいたい都会的でハイソさを感じさせる女性である)が、こんなことを言っていた。こんな経験をした。そういえば私もこんな経験をした。考えてみると、確かに○○って、××よね――みたいな感じで、「意外な気づき」「発見」をして、人生がよりよいものになりました、みなさんもこんなことを考えてみるのはどうですか、こんなことしてみるのはどうですか、と思わせる、それが女性誌コラムだと思うの。私の偏見ではね。やっぱり、「人生の先輩として皆さまにお教えしたい」という態度になりうるわけ。その澄んだポジティブさがひねくれた私には鼻につき、素直に受け止められなかったりする。
ページの4分の1とか、半分とかで、いかにもオマケみたいに見せているものはおいといて、特にこのコラムのようにがっつり1ページまるまるもらって、しっとりした明朝体で、かわいいイラストはあるけれど大きな写真などはなく文章びっちりになってるページだと、特にそう。ちゃんとしたことが書いてある。広い意味で、実になること、人生訓になり得るようなことが書いてある。
私にも、自分の人生から導き出した人生訓、あるにはあるよ。あるけど、女性誌で読者の皆さまに教えようとは全然思わないのね。
私の人生訓は、私にしか当てはまらないからね!
私にとってはすごく大事だけど他人にとっちゃ何の足しにもなるまい、っていう確信もあるし、そんな大事なもんを他人に言ってどうする、って思ってるところもある。
でも、女性誌のコラムのフォーマットって、それをさせてくれない(気がする)。どうしてもこの欄に載せることとなると、しっとりとためになることを書かなきゃいけない気になってくる。
まったくそれから抜け出したものもある。それはズバリ、書いている人がスターである場合。テレビに出まくってたり、世界を股に掛けて活躍していたりして、知名度が果てしなく高くて、「その人が書いている」というだけで十分に価値がある場合。そういう人なら、「昨日こんなところに行きました。楽しかったよ☆」だけでスペシャルなものになる。別にこれは皮肉で言ってるわけじゃない、これはこれでいい。こういう人が「学生時代はこうでした」なんて過去の話を書いてくれたらそりゃ最高の読みものでしょう。そしてもちろん、私にそんな知名度はない。
私はこの連載をずっとやってきて、実は、こういうコラムのあり方に悩みつづけてきたんですよ。
急にどうした、と思われるでしょうか。
私は、名前だけで価値のあるスターではないので、だとしたらなんらかのアドバイス風のものを披露しなきゃいけないのだが、知らない大勢の人にお教えすることを考えるのなんてつらくてしかたがない。あなたたちに教えることは何もない。申し訳ない。
私はずっこけエッセイ(死語)的なヤツか、あるいは、激情に追い立てられたときに出る怒りの文章しか書けない(今回のはわりと後者である)。
つまり、私は女性誌の1ページコラム連載にまったく向いていないのだった。
今までここで、自分のファッションに関する20年近く前の体験談をポロポロ書きつつも、これってスターが書けばおもしろいかもしれないけど私が書いても共感を呼ばないだろうし参考にもならないし、どうなんだ……? と毎度モヤモヤし、そのネタが尽きると絞り出すようにアドバイス的なものを書いて、やはり全くためにならないし。自分がやりたくない方向性のことをやっているので、文章が一つもおもしろくない、と困っていた。毎度ね、実は、このコラム書くの、めちゃくちゃ難しかったです。お仕事で書いてるほかの文章でここまで悩んだことないんですよ。ラ・ファーファを読んでる皆さんにどうやったらしっくり来るものが書けるのか、もういよいよ分からん。
私の体験談なんか私自身も飽き飽きしてるからもう書きたくないし、ファッションにも全然詳しくないからアドバイスも何もない。
あー、澄んだ空気感のコラム欄をこんなに汚しちゃったよ。さて、これからどうするかね?
Illustrator/Takayuki Kudo