買わりばえのしない私 vol.01
30回も「かわりばえのする私」という連載をしたのに、かわりばえたかどうか、疑問が残る最終回を迎えてしまった能町さん。ならばいっそ、どんなものを買っても変わることのない様子を見せてもらいましょう！ という連載がスタートします。
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ポポーを買った件
ポポーのこと、みんな知らないだろう。来るよこれから、ポポーブームが。
ポポーとは、アケビのような形をした緑色の果物です。今は便利な世の中だから手元のスマホで調べてよね。味はバナナとマンゴーの間のようなんていう人もいる。ねっとりしていてかなり甘い。日本に来た歴史は意外と古くて、明治時代にはあったらしいし、戦後頃にはむしろ今より全然メジャーな果物だったという説もあります。
私はこれを青森の産直市場みたいなところで去年買った。ゴロゴロ8個くらい入ったパックが350円！ 安い。珍しい果物好きの私は即断で買った。そして、めっちゃおいしかった。
でも、ポポーはなにせ傷むのが早いから、スーパーとかにはほとんど流通しないらしい。今年の私は手段を選ばず、メルカリアプリに通知のタイマーを設定してまで買った。すっごいんだよポポーは、香りが。届いた瞬間からものすごい甘い香りがする。食べるまで、家はずっとポポー臭。いや、くさくはないです。いい香りです！ って、前回ポポーのことを書くと言ったから書いてるけど、この話はもうずいぶん前のことなので、私の中で新鮮味を失っている。私は最近買ったリュックの話のほうがしたいんだ。
KLONのリュックサックを買った件
ふだん使いのバッグについて。
私は非常に長いことトートバッグ派だったのだ。
なんとなく、リュックサックってあんまりカッコよくなくない？ と思ってた。なんか、なんかなあ、鈍くさいイメージがあった。荷物取り出すときに前に持ってこないといけないしさあ。
かといって、ハンドバッグくらいのバッグはもう論外。私はいつもパソコンを持ち歩いているので、入らない。
とにかく荷物が重いのである。荷物が重い人はなんかダサい。だから、せめてリュックサックはやめときたい。パンッパンのリュックサック、ころんころんに球体みたいになったリュックサック、最悪である。
ということで、私は荷物が重くなってもトートバッグを死守していた。しかも、10年以上同じようにトートバッグを持って過ごしてきたから、体のバランスで、どうも右肩でしかトートバッグが持てなくなってしまった。左に掛けても滑り落ちちゃうのだ。右肩ばかりに負担がかかり、もうそろそろ体力の限界を迎えようとしていた。最近なんか、ノーパソに加えて時にはiPadまで持ってることもあって、こうなると右肩が痛い。関節が根こそぎ外れそうである。
……こういうことを人に話すと、みんな、リュックにしなよ、って言うわけ。久保ミツロウさん（ラジオでパートナー組んでるお友達の漫画家）にも言われましたよ。無印のがとてもいいよって。
まあ、言うよね。支えるのが両肩だもん、楽ですもん。でも、リュックか～……。ずっと拒否してきたからなあ。それに、あれって背面の守備力ゼロじゃん。こっそりチャック開けられて何かを盗み出されたら終わりじゃん。私、東京の人を信じてないの。生き馬の目を抜く都会だから、ふだん見えない場所にもスリがうじゃうじゃしているはずなんだきっと。一度も経験ないけど。
って、ずっとリュック拒否していたんだけど、先日「エルピス」を見てたらさ、主人公の凛としたアナウンサー・浅川恵那役である長澤まさみが、仕事から帰り際のシーンで、リュックだったの！ あの浅川恵那アナ（長澤まさみ）も！ スマートでカッコよく生きてそうな浅川アナ（長澤まさみ）でも、そりゃキャスターとして毎日読むべき資料がたくさんあって、きっと荷物は重いよね！ そうなれば、リュックなんだ！
私は、結局長澤まさみによってリュックを買わされた。久保さんごめん。久保さんのアドバイスよりも長澤まさみがデカかったかもしれない。
しかも、なぜか大阪で買った。私はたまたま行った先でふとそれなりに大きなものを買うのが好きだ。大阪でルクアっていう駅ビルをうろついていたら、KLONという知らないブランドのお店に、とてもシンプルで、荷物を入れても球体にならなそうなのがあったの。久保さんごめん、無印でもなかった。
でも、後ろからスられそう……という意識はぬけない。私は上京してもう20年以上なのにまだ東京に油断していない。
Illustrator／Takayuki Kudo
