能町みね子連載「買わりばえのしない私」vol.02本誌発売と同日公開!!

買わりばえのしない私 vol.02
「かわりばえのする私」という連載を30回もしたのに、今ひとつかわりばえなかった能町さん。 開き直ってどんなものを買っても変わることのない様子を見せてもらう連載第2回! 暦は無視しても行事は大切にする心、見習いたい!

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イヤーカフを買った件

 イヤーカフなんてね、うちピアス穴5つも開いとるけぇ、ピアスたくさんするだけで十分て思うとったんじゃ。なんで広島弁になったんじゃろ。なんとなく私の中でハスッパな女子は広島弁でいてほしいという願望があるんだな。
 慣れない広島弁はやめます。で、ピアス穴たくさんの私はイヤーカフに興味なかったんだけど、ピアスって大きくすると垂れ下がる方向にしか行かないし、垂れ下がらせるとわりと「ゴージャス」か「民族」の方向にぶれていく。どうもガチャガチャさせるのには向いてない、って最近悩んでいた。そんなときたまたま新宿ルミネの小物のお店にイヤーカフが大量にあって。
 カラフルなイヤーカフをたくさんつけると、なんだか耳がガチャガチャしてかわいいんだよな。これは盲点だった。イヤーカフってすぐ落ちるんじゃないの? という心配もストレートに店員さんに聞いたけど、私これ買って2年くらい経つけど、意外と落ちてないですよ、と言ってくれたからすぐ信じちゃった。
 イクラみたいな形のと、金持ちの指輪みたいな派手めのやつ、2コお買い上げ。私がイヤーカフしてたら、あっ今日機嫌いいんですね、と思ってください。


江戸小染 はなを買った件
 手帳も数年前からスマホのアプリに変えてしまってすべてクラウドで管理していて、メモ帳も基本的に持たずにほぼスマホに書き留めるようになっていて、そこそこ生活がデジタル化している私だけど、いまだに紙の年賀状をしっかり送っている。
 今どき、紙のお手紙が届くと、なんかうれしくないですか。そんなの、年賀状くらいしかチャンスがないじゃないですか。だから私はいまでも紙の年賀状を送る。返事が来なくても送る。自己満足のために、何人かは送り返してくれると信じて、意地でも送る。
 ここまでして紙の年賀状を送るわけだから、多少は凝る。
 まずですね、私は丁寧に宛先を全部手書きで書く。意地でも手書き。絵のある面はパソコンで印刷するので基本的に全部同じだけど、そこにも手書きでちょこっとメッセージとか書く。
 そして、いつも私は、あのよくある年賀くじつきハガキではなく、年賀くじつきの”切手“のほうを買いますね。
 あの既製のハガキのデザインが、なんとなくあまり好きになれないものでね。だから毎年この時期、世界堂(巨大文具店)に行って、ハガキ大の紙のコーナーの中から風合いのいいモノを選びます。これが楽しいんですってば。
 今年はね、「江戸小染 はな」という紙を選びましたよ。小さな花模様のエンボス加工が入った、ちょっと和風な感じの、粋な紙。いろいろな色を買いました。これに、くじ付きの切手を貼って送るんです。それだけでちょっとうれしい。自己満足。
 でも、結局年末は忙しい。いつだって結局そうなんだ。年賀状なんかに時間を割いていられないのである。すてきな切手とすてきなハガキ大の紙は余裕を持って買っておくのだが、それらを買った時の袋に入れたまんま、私は余裕で年を越す。おせちを食い、もちを食い、すると律儀な人たちが送ってくれた年賀状たちがぼちぼち手元に届きはじめる。もう来ないだろう、と思ったあたりで、やおら腰を上げて取りかかる。
 私としてはね、年賀くじハガキor切手の抽選日よりは前に送る、というのが目標です。抽選日はたいてい1月15日。そこを越えると、くじの当たり外れが分かった状態で送ることになる。外れていると分かった年賀状を送るのはさすがに野暮かな、というのが私の最低限の基準である。何も1月1日に届かなくてもいいと思うのよ。年賀状が届く前にふつうに仕事で本人に会っちゃってもいいのよ、別に。
 つまり私の年賀状は1月16~17日くらいに届きますが、会社やお店から来る事務的なやつ以外は、送ってもらった知り合いには基本的にお返しします。私の知り合いはドシドシ送ってください。ご応募お待ちしております。




Illustrator/Takayuki Kudo

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