【薬剤師が解説】尿から甘い香りがしたら……糖質不足に注意!

2023.12.17

「尿から甘い香りがするのは、もしかして糖尿病?」
と不安になったことはありませんか?

たしかに、糖尿病になると尿や体臭が甘い香りになることがありますが、別の理由でも臭いが甘くなることがあります。

その理由が「ケトン体」です。

本記事では、ケトン体とはどのようなものなのか、尿の臭いや体臭とケトン体との関係について解説します。



   1. ケトン体って?

ケトン体とは、脂肪の合成や分解の過程で産生される中間代謝産物です。

いくつか種類があり、人の体内で存在している種類は「アセト酢酸」「3-ヒドロキシ酪酸」「アセトン」があります。

ケトン体は飢餓状態になるとエネルギー源として利用される、いわば"予備のバッテリー"のようなものです。エネルギー源である糖質が不足しエネルギーとして活用できない場合、ケトン体が代役でエネルギー源となるのです。

体臭や口臭、尿臭でケトン臭が発生するのは、エネルギー源として活用されるようになったり、体内で産生が増加したりしたタイミングです。
通常であれば血液中にはほとんど含まれませんが、これらの理由から血液中にケトン体が含まれるようになり、甘酸っぱい香りのケトン臭が発生します。




   2. ケトン体のメリット・デメリット

ケトン体は体臭を変えてしまうデメリットがありますが、たくさんのメリットもあります。
メリットとデメリットの詳細は次の通りです。


  2-1.ケトン体がからだにもたらす良い影響
ケトン体がからだにもたらすいい影響は以下の通りです。

・脂肪を燃焼させる
・糖尿病の予防につながる
・脳血流量を増加させる
・炎症を抑制する効果がある
・エネルギー源として利用されるため、持久力が向上する

<脂肪を燃焼させる>
ケトン体は、細胞膜にある「HCAR2」という受容体と結合することにより、脂肪燃焼酵素群を活発化する作用があります。そのため、脂肪燃焼が活発化する効果が期待できます。

<糖尿病の予防につながる>
ケトン食を取り入れると、糖質摂取の過多を抑制して糖尿病を予防する効果が期待できます。
これは、糖質の代わりとなるケトン体をエネルギー源として利用するためです。

<炎症抑制効果・脳血流量の増加>
脳細胞の炎症を抑制する、脳血流量が増加すると、アルツハイマー型認知症の予防効果が期待できます。
ケトン体には強い抗炎症作用があるため、脳のエネルギー源として利用されれば脳の炎症が緩和されて健やかな脳内環境を維持できると考えられています。

<エネルギー源として利用されるため、持久力が向上する>
エネルギーとして活用されることから、骨格筋のエネルギー代謝の効率に役立つ可能性も期待されています。
ケトン体の一種である「β-ヒドロキシ酪酸」は、多くのエネルギー(ATP)を作り出すことから、運動時に摂取することでエネルギー供給の活性効果が得られ、運動パフォーマンスが向上する可能性があると、研究の結果からわかっています。


  2-2.ケトン体を増やす食事のデメリット
ケトン体は健康に関するメリットがたくさんありますが、一方でケトン体を増やす食事(ケトン食)や体内での過剰な増加は次のようなデメリットを生みます。

・ケトアシドーシスを引き起こす可能性がある
・食事制限が厳しく長期的な継続が難しい場合がある
・食事バランスを整えないと体調を崩す可能性がある
・頻尿・空腹感減少・体臭や尿臭の変化などのリスクがある

<ケトアシドーシスを引き起こす可能性がある>
ケトン体を過剰摂取すると「ケトアシドーシス」を起こす恐れがあります。ケトアシドーシスとは、血液が酸性に大きく傾いてしまう状態です。

健康状態がいい方であれば「生理的なケトアシドーシス」の状態で留まるため、問題はありません。要注意なのは糖尿病を患っている方です。「糖尿病性ケトアシドーシス」といい、意識障害を起こす危険性があります。

<食事制限が厳しく長期的な継続が難しい場合がある>

からだを飢餓状態にさせないと、ケトン体が増えてエネルギーとして活用されません。よって、カロリー制限や糖質制限および炭水化物制限、デザートなどの糖類を含む食品を制限する必要があるため、長期的な継続が難しい傾向にあります。

<食事バランスを整えないと体調を崩す可能性がある>
ケトン食は、糖質の代わりに高脂肪食を摂取するため、ブドウ糖が足りていない状態です。そのため、タンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維類などの栄養素をバランスよく摂取しないと、栄養失調状態になるリスクがあります。

栄養管理士が監修している献立を取り入れるなどして、栄養不足を防ぎましょう。

<頻尿・空腹感減少などのリスク>
ケトン体が体内で増加すると、頻尿・空腹感減少・体臭や尿臭の変化などがみられるようになります。

また糖質は、水分を保持する働きがあるため、糖質を断ちケトン体の増加ばかりを考えていると排尿回数が増加しやすくなります。脱水状態になりやすくなるため注意が必要です。

さらに、糖質を制限すると血糖値の変動が抑えられるため、食欲が湧きにくくなり空腹感が減少します。食べ過ぎ予防にはなりますが、食事量を減らしてしまうと栄養不足を起こすかもしれません。




RELATED関連記事

SPECIALスペシャル



RANKING人気記事

MAGAZINE最新号のご紹介

ラ・ファーファ最新号[2023年5月号]

5月号

発売日

2024年 3月 19日